時間あたりの工賃は、いま平均いくらか

整備の工賃は、作業時間(指数)に時間あたりの単価をかけて決まります。この単価をレバーレートと呼びます。日整連の調査(令和5年度の実績)では、業界全体の数字は次のようになっています。

時間あたり工賃金額前年からの動き
平均8,717円419円(約5%)上昇
中央値8,800円800円 上昇
最高19,200円(ディーラー)1,200円 上昇
最低3,000円(専業・自家)

日整連「自動車特定整備業実態調査」(白書記載のレバーレート、令和5年度実績)をもとに作成(2026年6月4日確認)。中央値は、全工場を金額順に並べたときのちょうど真ん中の値です。

まず見てほしいのは、平均と中央値がほぼ同じ8,700〜8,800円に並んでいる点です。あなたの店の単価がこれを下回っているなら、半分以上の工場より安く作業を請けている計算になります。逆にこれを上回っていても、それだけで高すぎるとは言えません。同じ業態の中で見て、はじめて判断できます。

業態でこれだけ違う、自店はどこか

同じ単価でも、ディーラーと町の整備工場では前提がまるで違います。最高の19,200円はディーラー、最低の3,000円は専業・自家でした。倍どころか6倍以上の開きです。だから比べる相手は「業界全体」ではなく、自店と同じ業態に絞ります。

業態のおおまかな区分は次のとおりです。

業態どんな店か単価の傾向
専業整備・車検を主な仕事にする工場業界全体の中では低め
兼業販売や給油などと整備を兼ねる店専業と近い水準
ディーラーメーカー系の販売・整備拠点業界の中で最も高い

業態区分は日整連の調査区分にもとづく整理(2026年6月4日確認)。単価の傾向は前掲の最高・最低の業態から記載。

自店の位置の測り方 まず自分が専業・兼業・ディーラーのどれに当たるかを決めます。そのうえで、最新の白書に載る業態別の単価分布の中で、自店がどのあたりにいるかを確かめます。専業なのにディーラーの単価と比べて落ち込む必要はありません。比べる枠を間違えると、改定の判断もずれます。

単価は上がっているか、横ばいか

「うちだけ据え置きで、よそはどうなのか」。この問いには、はっきり上がっているとお答えできます。時間あたり9,000円以上の工場の割合の推移が、それを示しています。

調査年度9,000円以上の割合
平成28年度10.6%
令和4年度37.5%

日整連の調査(白書記載のレバーレート分布)をもとに作成(2026年6月4日確認)。

9,000円以上の工場は、6年ほどで1割から4割近くへと増えました。さらに令和6年度の調査では、専業・兼業・ディーラーのすべての業態で単価が前年を上回っています。改定をためらっている間にも、周りの単価は動いています。「値上げは特別なこと」ではなく、業界全体が原価高を単価へ反映させている流れだと読めます。

人件費から、最低単価を積み上げる

外の平均は、あくまで照らし合わせる物差しです。自店の単価の土台は、原価から積み上げて出します。時間あたりに必要な額を割り戻すと、これ以上は下げられないという最低単価が見えます。目安となる費目は次のとおりです。

  • 整備士の人件費。 給与・賞与・社会保険料の会社負担分を合わせた額を、実際に作業できる時間で割ります。整備士の賃金水準は厚生労働省の賃金統計で業界の目安を確かめられます。
  • 設備と工具。 リフトや測定器、特定整備の電子制御装置に対応する機器の購入・更新の費用です。
  • 工場の家賃・光熱費。 1時間あたりに割り戻して単価へ乗せます。燃料や電気の高騰は、ここに効いてきます。
  • 利益。 借入の返済や次の設備投資に回す分を、はじめから単価に含めます。

このとき手がかりになるのが、整備要員1人あたりの年間整備売上高です。日整連の令和6年度の調査では、自家を除いて1,562万7千円、前年より5.2%増えています。業態別では専業・兼業が1,137万4千円、ディーラーが2,518万8千円でした。自店の整備士1人あたりの売上をこの数字と比べると、単価と稼働のどちらに余地があるかが見えます。

改定を、お客様にどう説明するか

根拠がそろえば、値上げは言い出しやすくなります。お客様に伝えるときは、次の順で話すと納得を得やすくなります。

  1. 何が上がったかを具体的に。 整備士の人件費、機器の更新費、光熱費。抽象的な「物価高」ではなく、費目で示します。
  2. 外の水準と並べる。 「同じ業態の中央値は8,800円で、当店はこれまでそれを下回っていました」と、自店の位置を数字で添えます。
  3. いつから・どの作業がいくらかを書面で。 口頭だけでなく、改定後の単価表を渡します。後の行き違いを防ぎます。

軽油や電気のように、お客様自身も値上がりを実感しているコストから話を始めると、工賃の改定も同じ流れの中の話として受け止めてもらいやすくなります。安く請け続けて整備士に賃金を返せなければ、人が辞めて店が立ちゆきません。あなたが単価を保つことは、結局はお客様の車を見続ける体制を守ることでもあります。

数字を使うときの、注意点

この記事の数字は、改定を切り出す入口の物差しです。最後の判断の前に、次の点だけは押さえてください。

  • 基準の年度を確かめる。 ここで挙げた単価は日整連の調査の特定の年度の実績です。改定の根拠にするなら、最新の白書で今の数字を取り直してください。
  • 比べる業態をそろえる。 平均や中央値は全業態を混ぜた値です。専業なら専業の分布で見ないと、自店の位置を見誤ります。
  • 地域の相場も見る。 同じ業態でも、商圏によって単価の水準は変わります。近隣の同業の公表単価も参考にします。

詳しい単価の分布や業態ごとの内訳は、日整連が発行する「自動車整備白書」で確認できます。改定は一度決めると下げにくいので、原価と外の数字の両方を突き合わせたうえで進めてください。

よくある質問

整備工賃の時間あたり単価は、平均でいくらですか?
日整連の令和5年度の調査では、時間あたり工賃(レバーレート)の平均は8,717円、中央値は8,800円でした。業態の幅は広く、最高はディーラーの19,200円、最低は専業・自家の3,000円です。前年から中央値は800円、平均は419円(約5%)上がっています。
工賃の単価は上がっていますか、それとも横ばいですか?
上がっています。時間あたり9,000円以上の工場の割合は、平成28年度の10.6%から令和4年度には37.5%まで増えました。令和6年度の調査では専業・兼業・ディーラーのすべての業態で前年を上回っています。
整備要員1人あたりの年間の整備売上高は、どのくらいですか?
日整連の令和6年度の調査では、整備要員1人あたりの年間整備売上高(自家を除く)は1,562万7千円で、前年より5.2%増えています。業態別では専業・兼業が1,137万4千円、ディーラーが2,518万8千円です。
工賃を改定するとき、何を根拠にすればよいですか?
原価の積み上げ(整備士の人件費・設備・光熱費を1時間あたりに割り戻した額)を土台に、同じ業態の中央値や平均と照らして説明します。日整連の調査は業態別の単価と整備士の賃金統計をそろえて参照できるので、根拠として示しやすいデータです。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 日本自動車整備振興会連合会(日整連)「令和6年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について」(2026年1月29日公表。整備要員1人あたり年間整備売上高 15,627千円、業態別、整備要員平均年齢 等) jaspa.or.jp/Portals/0/.../R06jittaityousa.pdf (2026年6月4日確認)
  2. 日本自動車整備振興会連合会(日整連)「自動車整備白書/自動車特定整備業実態調査」案内ページ(白書記載のレバーレート 平均8,717円・中央値8,800円・最高19,200円・最低3,000円、9,000円以上の割合 平成28年度10.6%→令和4年度37.5%) jaspa.or.jp/member/data/whitepaper.html (2026年6月4日確認)
  3. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(自動車整備従事者の賃金の目安。職種別データを参照) mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html (2026年6月4日確認)

レバーレートの平均・中央値および9,000円以上の割合は、報道で示された白書記載の値(令和5年度実績・各年度調査)にもとづきます。確定値と最新の業態別分布は日整連の白書原本で再確認してください。整備士の賃金水準は調査年・集計区分により幅があります。

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