免許返納は、いま実際どれだけ起きているか

まず全国の数字を押さえます。警察庁の運転免許統計によると、2024年(令和6年)の運転免許の自主返納の申請は42万7,914件でした。前年から増えていて、増加は5年ぶりです。年代の内訳を見ると、その6割を75歳以上が占めています。

項目2024年(令和6年)補足
自主返納の
申請件数
42万7,914件5年ぶりに増加
うち75歳以上26万4,916件(約6割)前年から3,347件増
うち75歳未満16万2,998件前年から4万1,610件増
免許保有者数
(全年代)
約8,174万人2024年12月末時点

警察庁「運転免許統計(令和6年版)」(2025年5月9日掲載)をもとに作成(2026年6月4日確認)。

42万件という数字だけ見ると、需要が一気に細るように感じます。けれども免許保有者は約8,174万人ですから、返納は母数のごく一部です。一気に細るのではなく、年ごとに少しずつ進む変化として捉えるのが、数字の正しい読み方になります。

返納する層と、運転を続ける層に割れる

客層の変化は「全員が一斉に車を降りる」のではなく、二手に割れて進みます。あなたの商圏でも、同じ高齢層のなかでこの二つが混在します。

  • 返納して車を手放す層。 体調や家族の心配から運転をやめ、車そのものを手放します。ここでは買取・廃車の相談と、家族の送迎用の車という新しい需要が生まれます。
  • 運転を続ける層。 まだ生活に車が要るため、より安全な車へ乗り換えたり、いまの車に乗り続けたりします。ここは乗り換えの商談と、車検・整備の入庫が続きます。

どちらの層がどれだけいるかは地域差が大きく、全国平均では測れません。鉄道やバスが薄い地域ほど「運転を続ける層」が厚くなり、返納が進みにくい傾向があります。自分の商圏がどちら寄りかを、日々の応対から掴むのが先決です。

返納以外の選択肢を、案内できるか

「運転が不安」という相談を、すぐ返納の話にしてしまうと、運転を続けたいお客様の選択肢を狭めます。返納のほかに、安全装備の車へ乗り換える道と、サポートカー限定免許という道があります。

サポートカー限定免許とは 運転に不安はあるけれど運転は続けたい方に向けて、衝突被害軽減ブレーキ(対車両・対歩行者)とペダル踏み間違い時加速抑制装置を備えた普通自動車に限って運転できる免許です。申請に年齢制限はなく、手数料は無料。対象になる車種は、警察庁のホームページにメーカー別の一覧が載っています。

この制度を知っておくと、返納相談を受けたときに案内の幅が広がります。たとえば「今の車は対象外だが、この車種なら限定免許でも乗り続けられる」という話は、そのまま乗り換えの提案につながります。お客様にとっては車を手放すか続けるかの判断材料になり、あなたにとっては一台の商談の入口になります。

客層の変化は、自店のどこに効くか

返納と高齢化は、店の業務ごとに効き方が違います。自分の店の柱がどこかで、見ておく数字も変わります。

店の業務どう効くか備える動き
車検・整備続ける層の入庫は当面残るが、一台あたりの走行距離は落ちやすい「次の車検まで乗るか」を点検時に確認し、入庫見込みを台数で把握
買取・廃車返納に伴う手放しの相談が増える家族からの相談にも応じられるよう、手続きと引き取りの段取りを用意
新車・中古車
販売
乗り換え需要と、家族の送迎用の車という新しい需要が出る安全装備つきの車種を、限定免許の対象一覧とあわせて提案できる状態に

効き方は商圏の交通事情や顧客構成で変わります。自店の入庫台帳・販売記録と突き合わせて判断してください。

共通して効くのは、お客様一人ひとりの「いつまで乗るか」を早めに掴むことです。返納も乗り換えも、多くは突然でなく、点検や車検の会話のなかに兆しが出ます。そこを聞き取れているかどうかで、半年先の入庫の読みが変わります。

商圏の足の変化を、どこで掴むか

地域の動きは、二つの目線で見ます。一つは目の前のお客様、もう一つは地域全体の統計です。

  • 目の前のお客様(毎日)。 車検・点検の入庫が、いちばん早い情報源です。次の車検まで乗るか、距離を抑えているか、家族が送迎を始めたか。これを記録に残すと、自店の客層の変化が台数で見えてきます。
  • 地域全体(年1回)。 警察庁の運転免許統計が、毎年5月ごろに公表されます。自主返納の件数や、高齢者の免許保有の状況を、全国・年代別で確かめられます。自分の商圏の肌感と、全国の傾向のズレを点検する材料になります。

大事なのは、全国平均をそのまま自店に当てないことです。返納が全国で増えていても、あなたの商圏では「運転を続ける層」が厚いかもしれません。統計は背景の確認に使い、判断の軸は自店の台帳に置きます。

数字を扱うときに、気をつけること

この記事の数字は、警察庁の運転免許統計という公的な一次情報から取りました。一方で、推測で在庫や設備を決めないために、はっきりさせておきたい点もあります。

  • 返納件数は「全国」の数字です。 あなたの都道府県・市町村の返納の動きは、地域別の資料で別に確認します。全国が増えていても、地域では違う動きのことがあります。
  • 返納が、そのまま自店の売上減に直結するとは限りません。 返納する人が乗っていた車の買取・廃車、家族の送迎用の車という需要も同時に生まれます。減る面と増える面の両方を、自店の記録で見ます。

足元の判断は、全国統計より自店の入庫・販売の記録のほうが正確です。統計は地域の背景を読むために使い、最後はあなたの店の数字で確かめてください。

よくある質問

免許返納が増えると、整備や車検の仕事はすぐ減りますか?
すぐには減りません。2024年の自主返納は42万件と多いものの、免許保有者は約8,174万人で、返納はそのごく一部です。返納する層と運転を続ける層に客層が割れていくため、目の前のお客様一人ひとりが「いつまで乗るか」を把握しておくことが、入庫の見込みを立てる近道になります。
返納する人は、車を手放すと決まっていますか?
決まっていません。返納の前に、より安全な車へ乗り換える方や、衝突被害軽減ブレーキなどを備えた車に限るサポートカー限定免許へ切り替えて運転を続ける方もいます。返納=廃車・買取とは限らないので、お客様の意向を確認してから話を進めるのが確実です。
サポートカー限定免許とは、どんな制度ですか?
運転に不安があるけれど運転は続けたい方に向けて、衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置を備えた普通自動車に限って運転できる免許です。申請に年齢制限はなく無料です。対象になる車種は警察庁のホームページにメーカー別の一覧が載っています。
高齢のお客様の足が変わる兆しは、どこで見えますか?
車検や点検の入庫時です。次回の車検まで乗るか、距離を抑えているか、家族が送迎を始めたかは、応対のなかで聞けます。地域全体の動きは警察庁の運転免許統計(毎年5月ごろ公表)で、自主返納件数や高齢者の保有状況を確かめられます。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 警察庁「運転免許統計」(令和6年版・2025年5月9日掲載。2024年の自主返納申請42万7,914件、うち75歳以上26万4,916件、免許保有者約8,174万人 等) npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo.html (2026年6月4日確認)
  2. 警察庁「運転免許統計(令和6年版)」本編PDF npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/r06main.pdf (2026年6月4日確認)
  3. 警察庁「サポートカー限定免許について」(衝突被害軽減ブレーキ等を備えた普通自動車に限る・申請無料・対象車種一覧の案内) npa.go.jp/policies/application/license_renewal/support_car.html (2026年6月4日確認)
  4. ニッセイ基礎研究所「2024年の高齢ドライバーの免許返納」(警察庁統計をもとにした年代別内訳の分析) nli-research.co.jp/files/topics/83881_ext_18_0.pdf (2026年6月4日確認)

数値は2024年(令和6年)時点の警察庁統計にもとづきます。地域別の動きや、返納の前後の選択は地域・個人で異なります。判断の前に各機関の最新ページと、自店の入庫・販売記録で再確認してください。

関連記事