保有台数で見ると、EVとHVの差はどれだけか
投資判断でまず見るのは、新車の販売数より保有台数です。今あなたの店に車検や整備で入ってくるのは、新しく売れた車ではなく、すでに走っている車だからです。自動車検査登録情報協会の統計で、2025年3月末の燃料別の保有台数を並べます。
| 区分 | 保有台数(2025年3月末) | 前年(2024年3月末)からの伸び |
|---|---|---|
| ハイブリッド車 (PHV含む) | 1,394万5,137台 | 前年比 +8.7%(前年は1,282万5,739台) |
| 電気自動車 (BEV) | 22万1,889台 | 前年比 +12.9%(前年は19万6,475台) |
自動車検査登録情報協会「ハイブリッド車・電気自動車の保有台数推移」(各年3月末現在)をもとに作成(2026年6月4日確認)。ハイブリッド車の台数はプラグインハイブリッド車を含みます。
差は約63倍です。電気自動車は前年比+12.9%と伸び率こそ高いものの、台数の絶対値ではハイブリッド車が桁違いに多い。整備の母数として日々入ってくるのは、当面ハイブリッド車だと数字がはっきり示しています。電気自動車の専用機器を最初に揃えるより、ハイブリッド車の高電圧を安全に扱える体制を先に固めるほうが、入庫の実態に合います。
保有全体に占める割合は、いま何%か
台数だけでは大小がつかみにくいので、保有全体に対する割合で見ます。日本の自動車保有台数は約8,270万台(2025年3月末)です。これを分母にすると、それぞれがどれだけの規模かが見えます。
| 区分 | 保有台数 | 全保有(約8,270万台)に占める割合 |
|---|---|---|
| ハイブリッド車 | 約1,394万台 | 約16.9%(おおむね6台に1台) |
| 電気自動車 | 約22万台 | 約0.27%(およそ370台に1台) |
保有台数の分母は自動車検査登録情報協会の保有台数統計(2025年3月末・約8,270万台)。割合はクルマ商売ラボが算出(2026年6月4日確認)。
ハイブリッド車はすでに6台に1台の水準で、整備の現場に当たり前に入ってくる規模です。電気自動車は370台に1台で、商圏によっては年に数えるほどしか触りません。あなたの店の周りで電気自動車を見かける頻度と、この0.27%という数字が合っているかを照らし合わせてみてください。実感より少なければ、設備投資の前にまず台数を確かめる段階です。
新車販売は、EVとHVでどう動いているか
保有が「今の入庫」なら、新車販売は「数年先の入庫」です。今売れている車が、車検の3年後・5年後にあなたの店へ戻ってきます。2024年(暦年)の新車販売の動きを見ます。
- 電動車(ハイブリッド・プラグインハイブリッド・電気自動車・燃料電池車の合計)が新車の57.5%を占めました(前年から7.2ポイント増。登録車と軽自動車の合計)。
- ハイブリッド車は204万181台で前年比+9.2%。年間200万台を超えたのは初めてです。
- 電気自動車は5万9,736台で前年比32.5%減。伸びていたのが一転して落ちました。
電動車の比率が6割近いと聞くと急かされそうになりますが、中身のほとんどはハイブリッド車です。電気自動車は新車でも足踏みしていて、保有が一気に立ち上がる兆しは今のところ数字に出ていません。「これから増える」を理由に大きく前倒しするより、保有と新車の両方を毎年見て、上向きを確かめてから投資を足す進め方が安全です。
自分の商圏の台数は、どこで確かめるか
ここまでは全国の数字です。投資を決めるのは全国ではなく、あなたの商圏の実態です。同じ全国0.27%でも、都市部と地方では走っている台数がまるで違います。次の順で自店に近い数字を取ります。
- 自動車検査登録情報協会の保有台数統計で、自分の都道府県の燃料別・地域別の台数を見る。全国の縮図ではなく、自店の商圏に近い分母がつかめます。
- その台数を、店の半径10キロ・20キロといった商圏の広さに当てはめて、年に何台触る見込みかをざっくり置く。
- 見込み台数と、設備・研修にかかる費用を並べて、何年で元が取れるかを概算する。台数が少なければ回収に時間がかかるので、投資の規模を抑えます。
地域差は大きく、人口あたりの電気自動車・プラグインハイブリッドの普及台数では岐阜県が全国で最も高い水準にあります(次世代自動車振興センターの補助金交付台数を人口で割った集計)。自分の地域がどの位置かを知っておくと、全国平均だけで判断するより精度が上がります。
数字を、整備投資の順番にどう落とすか
ここまでの数字を、明日からの判断につなぎます。電気自動車もハイブリッド車も高い電圧を扱う点は共通なので、安全対策は早めに、専用設備は台数を見ながら、という二段構えにします。
| 投資の中身 | いつ手をつけるか | 判断のもとにする数字 |
|---|---|---|
| 高電圧を扱う基礎研修・ 感電を防ぐ手順と保護具 | 先に整える | ハイブリッド車の保有が約1394万台。日常の入庫にすでに含まれているため、台数の多少を待たずに対応 |
| 電気自動車専用の機器・ 高圧電気の取扱資格 | 商圏の台数を見て判断 | 電気自動車は全体の0.27%。自店の都道府県・商圏の実数が少なければ、大きな先行投資は急がない |
| 専用設備の増設・ 本格的な人員配置 | 伸びを確かめてから足す | 保有の二桁成長が続くか、新車が前年割れから戻るか。毎年3月末の保有と暦年の新車で確認 |
投資の順番はクルマ商売ラボの整理です。具体的な資格要件や設備基準は、国土交通省や各団体の最新情報で確認してください。
大事なのは、安全対策と専用設備を切り分けることです。高電圧の取り扱いは、すでに大量に走っているハイブリッド車のためにも要る話なので、ここは台数を待たずに進めます。一方で電気自動車だけを当て込んだ専用投資は、商圏の数字が小さいうちは規模を抑える。この切り分けが、寝かせる設備と逃す客のどちらも避ける形です。
数字で言い切れない、確認が要ること
この記事は、一次情報で確かめられた保有台数と新車販売だけで投資の順番を組み立てました。一方で、数字だけでは決められないこともあります。推測で設備を入れないよう、確定分と分けて並べます。
- 電気自動車整備に必要な資格や設備の具体的な基準。 高い電圧を扱う作業の安全や資格の要件は、国土交通省や各団体の制度として定まっています。投資の前に、自店が対象になる範囲を最新の一次情報で確かめてください。
- 地域別・車種別のこの先の伸び。 全国の保有・新車は数字で追えますが、自店の商圏で電気自動車が今後どれだけ増えるかは、地域の事情で変わります。毎年の保有と新車を自分で追って、伸びを確かめながら判断します。
普及の数字は毎年動きます。今の保有がハイブリッド車に大きく偏っていること、電気自動車はまだ小さいことを押さえたうえで、自店の商圏の実数を当てて投資の規模を決めるのが、いちばん外れにくい進め方です。
よくある質問
出典
- 自動車検査登録情報協会「ハイブリッド車・電気自動車の保有台数推移」(各年3月末現在。2025年=ハイブリッド車1,394万5,137台・電気自動車22万1,889台) airia.or.jp/publish/file/HVEV_2025.pdf (2026年6月4日確認)
- 自動車検査登録情報協会「わが国の自動車保有動向」(保有台数の総数・約8,270万台=2025年3月末) airia.or.jp/publish/statistics/trend.html (2026年6月4日確認)
- 日本自動車会議所(自販連・全軽自協発表をもとにした2024年暦年の新車販売報。電動車比率57.5%・ハイブリッド車204万181台・電気自動車5万9,736台) aba-j.or.jp/info/industry/23565/ (2026年6月4日確認)
- 日本自動車販売協会連合会(自販連)統計(燃料別の新車販売台数) jada.or.jp/pages/54/ (2026年6月4日確認)
- 次世代自動車振興センター「EV等 保有台数統計/補助金交付状況」(地域別の普及・人口あたり普及台数の参考) cev-pc.or.jp/tokei/hoyuudaisu.html (2026年6月4日確認)
保有台数は各年3月末時点、新車販売は暦年(1〜12月)の数字です。割合(16.9%・0.27%)は保有台数を約8,270万台で割ったクルマ商売ラボの算出です。判断の前に各機関の最新ページで再確認してください。