まず押さえる ― 輸出台数と落札単価の実数
相場の話に入る前に、土台になる数字を3つ置きます。輸出が伸びている、その輸出向けの仕入れが会場に来ている、だから単価が上がっている、という順でつながります。
| 指標 | 2025年の実績 | 前年比 |
|---|---|---|
| 中古車の輸出台数 (JUMVEA集計) | 170万8604台 (3年連続で過去最高) | 9.1%増 |
| オークション出品台数 (USS) | 346万4039台 | 11.3%増 |
| オークション成約台数 (USS) | 228万9839台 | 7.8%増 |
| 平均成約単価 (USS) | 122万6000円 | 3.5%増 |
JUMVEA(2026年1月公表)およびUSS月次・年次資料(2026年1月公表)をもとに作成(2026年6月4日確認)。USSは国内最大のオークション会場のため、業界全体の傾向を読む目安に使えます。
出品が1割増えているのに、成約単価が下がるどころか上がっています。玉数が増えれば普通は値が緩むので、これは買い手の数と意欲が玉数の増加を上回っていることを示します。その買い手の中心が、輸出向けの業者です。
相場を押し上げているのは、何か
国内の仕入れ相場を下から支えている力は、大きく3つです。どれも会場の外で起きていて、あなたの店の都合では動かせません。だからこそ、要因として押さえておきます。
- 円安。 円の価値が下がると、海外の買い手から見て日本の中古車が割安になります。同じ車を高く買っても、現地で売れば採算が合う。輸出業者が強気に競れる元になっています。
- 海外の需要。 アフリカや中東、アジアでは、安くて壊れにくい日本の中古車の人気が続いています。2025年はタンザニア向けが53.8%伸びるなど、新しい売り先も広がりました。
- 新車回復の裏返し。 新車の供給が戻り、下取りで会場に出る車は増えています。供給が増えれば本来は値が下がりますが、その増えた分を輸出の買いが吸収するため、単価が下がりにくくなっています。
この3つが重なっている間は、相場は高い水準で動きます。逆に言えば、どれか1つが崩れると相場の前提が変わります。崩れる側の話は後で見ます。
輸出で強いのは、どの車か
輸出の伸びは、すべての車に同じように効くわけではありません。仕向け地ごとに好まれる車が違い、そこに当たる車は会場で割高になります。2025年の主要な仕向け地は次のとおりです。
| 仕向け地 | 2025年の台数 | 前年比 |
|---|---|---|
| アラブ首長国連邦 (UAE) | 25万2637台 (2年連続で首位) | 11.7%増 |
| ロシア | 18万6584台 | 6.3%減 |
| タンザニア | 11万7489台 | 53.8%増 |
JUMVEAの仕向け地別集計(2026年1月公表)をもとに作成(2026年6月4日確認)。UAEは中東・アフリカ向けの積み替え拠点を兼ねるため、最終的な需要地は広範囲にわたります。
UAEを通って中東やアフリカへ流れる車は、年式が古くても走行距離が多くても買い手が付きやすい傾向があります。一方、ロシア向けは制裁の影響で前年を割りました。仕向け地の増減がそのまま特定の車種の相場に響くので、自分の商圏でよく扱う車が、どの仕向け地で人気かを一度つかんでおくと査定の精度が上がります。詳しい台数の動きは、財務省の貿易統計で車種・仕向け地別に追えます。
査定に、どう織り込むか
背景の数字を、あなたの値付けにつなげます。輸出が相場を支えている局面では、買取の構えはこう変わります。
- 輸出で人気の車は強気に取り、回転で稼ぐ。 海外で需要のある車種は、会場でも高く売れます。仕入れ値を上げてでも在庫を確保し、長く抱えずに売り切る方が利益が残ります。古い年式や過走行でも、輸出が付く車なら値を付けられます。
- 相場の更新を、会場の実績で確かめる。 査定の基準は、印象ではなく直近の落札実績で持ちます。USSなどの会場別・車種別の成約データを毎週見て、自分の査定額が現在の相場とずれていないかを照合します。
- 為替の節目を、査定見直しの合図にする。 円相場が大きく動いた週は、輸出業者の仕入れ意欲も変わります。為替が円高に振れたら、強気の査定を一段控える。為替は月単位で必ず確かめます。
相場が崩れるとしたら、きっかけは何か
いまの高い相場は、外部の3つの力で支えられています。支えが外れる兆しを早く拾えれば、強気の査定を引く判断が間に合います。崩れる側のきっかけも3つです。
- 為替が円高に振れる。 円高になると、海外から見た日本の中古車の割安感が薄れます。輸出の採算が悪くなり、会場での買いが弱まります。為替は最も早く相場に効くので、最初に見る指標です。
- 仕向け地が輸入規制や年式制限を強める。 中古車を多く受け入れている国が、環境や産業保護を理由に輸入を絞ることがあります。その国向けで値が付いていた車種から、先に落札単価が下がります。
- 海上輸送が滞る。 船の確保が難しくなったり運賃が上がったりすると、輸出のコストが膨らみます。2024年は輸送の制約が輸出の重しになりました。輸送が乱れると、伸びていた台数が一度止まります。
3つとも前ぶれなく一気に動くわけではなく、ニュースや為替の値に兆しが出ます。仕入れを長めに抱える車種ほど、この兆しを早めに拾います。
数字を見るときに、注意すること
相場の判断を一次情報に寄せるほど、数字の出どころと前提を取り違えない用心が要ります。今回の数字を読むうえで、分けて見ておきたい点を並べます。
- 集計の主体で台数が変わる。 輸出台数は、集計する団体や対象(車両価格の下限、乗用車だけか貨物も含むか)で数字が変わります。本文のJUMVEA集計と、財務省貿易統計をもとにした別の集計では台数が一致しません。比べるときは同じ出どころでそろえます。
- 会場の単価は車種構成で動く。 平均成約単価は、その月にどんな車が多く出たかでも上下します。高い車が多く出た月は平均が上がるので、単価の増減は車種ごとの相場と分けて読みます。
- 仕向け地の最新は、その都度確認する。 規制や情勢は急に変わります。本文の仕向け地別の台数は2025年の実績です。仕入れの判断に使うときは、財務省貿易統計の最新月で更新してください。
輸出と為替は、あなたの店の外で動く相場の地合いです。数字そのものより、出どころと更新の時期を押さえておくほうが、相場が動いたときに理由から判断できます。確かめたうえで値を決めます。
よくある質問
出典
- 日本中古車輸出業協同組合(JUMVEA)2025年 中古車輸出台数(前年比9.1%増の170万8604台・3年連続で過去最高、仕向け地別。日本自動車会議所による集計報) aba-j.or.jp/info/industry/25739/ (2026年1月公表/2026年6月4日確認)
- ユー・エス・エス(USS)2025年 出品・成約・平均成約単価(出品346万4039台・成約228万9839台・平均成約単価122万6000円。日本自動車会議所による集計報) aba-j.or.jp/info/industry/25561/ (2026年1月公表/2026年6月4日確認)
- ユー・エス・エス(USS)月次データ・IRライブラリ(出品・成約・単価の月次推移の原資料) ussnet.co.jp/ir/library/monthly/index.html (2026年6月4日確認)
- 財務省「貿易統計」(中古車の輸出台数・仕向け地別の原データ。車種・地域別の最新月はここで確認) customs.go.jp/toukei/info/ (2026年6月4日確認)
- 一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)中古車統計データ jada.or.jp/pages/114/ (2026年6月4日確認)
輸出台数とオークション単価は各団体の公表値です。集計の主体・対象によって台数は一致しません。仕入れや査定の判断の前には、財務省貿易統計と会場の最新データで再確認してください。