タイヤは、いくら上がったか
まず、あなたが日々仕入れているタイヤの値上がりです。ブリヂストンは2025年3月、国内市販用タイヤ・チューブ・フラップのメーカー出荷価格を平均6〜8%引き上げると発表しました。改定の日は、夏タイヤが2025年6月1日、冬タイヤが2025年9月1日です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 国内市販用タイヤ(夏・冬)、チューブ、フラップ |
| 改定率 | 平均6〜8%(商品グループごとの平均。銘柄により率は異なる) |
| 改定日 | 夏タイヤ 2025年6月1日/冬タイヤ 2025年9月1日 |
| 理由 | 原材料価格の高騰、および物流コストの上昇 |
ブリヂストン「国内市販用タイヤの値上げについて」(2025年3月21日発表)をもとに作成(2026年6月4日確認)。
気をつけたいのは、この6〜8%が「メーカーの出荷価格」だという点です。あなたの仕入れ値や、客に出す店頭価格とは別です。改定率も銘柄ごとに違います。客に金額を言う前に、自店が扱う銘柄の新しい卸値を、まず仕入れ先に確認してください。一律で何%とは案内できません。
部品の仕入れ値は、この先どう動くか
次に、タイヤ以外の部品です。値上げの話で客に必ず聞かれるのが「いつ落ち着くのか」です。これに答えるには、企業どうしの取引価格を測る日本銀行の企業物価指数が使えます。2020年の平均を100とした指数で、原材料や部品の卸値の動きがわかります。
| 時点 | 国内企業物価指数(総平均)の前年比 |
|---|---|
| 2025年1月 | +4.2% |
| 2025年10月 | +2.7% |
| 2026年1月 | +2.3% |
日本銀行「企業物価指数」各月速報(2020年平均=100)をもとに作成(2026年6月4日確認)。
読み方は2つに分けます。前年比のプラス幅は、2025年初めの+4.2%から2026年初めの+2.3%へと小さくなりました。値上がりの勢いは弱まっています。一方で前年比はプラスのまま、つまり指数の水準そのものは下がっていません。上がった卸値が元の安さまで戻る動きとはみえません。客には「上がる速さは落ち着いたが、上がった分が下がるわけではない」と伝えるのが、数字に合った答えです。
工賃が上がる、部品代とは別の理由
転嫁を考えるとき、部品代だけを見ていると足りません。同じ車の同じ修理でも、1台にかかる作業の手間が増えているからです。日整連の自動車整備白書では、総整備売上高は2023年度実績で前年比5.9%増の6兆2561億円となり、2005年度実績以来18年ぶりに6兆円を超えました。
| 作業内容 | 2023年度の売上高 | 前年比 |
|---|---|---|
| 車検整備 | 2兆5400億円 | +2.6% |
| 事故整備 | 1兆1198億円 | +9.6% |
| 定期点検整備 | 4568億円 | +3.1% |
日本自動車整備振興会連合会(日整連)「自動車整備白書」2024年度版(2023年度実績)をもとに作成(2026年6月4日確認)。
とくに事故整備の伸びが大きい背景には、カメラやレーダーといった高額な部品の交換と、その後のエイミング(センサーの照準合わせ)やアライメント調整があります。ぶつけた箇所を直すだけでは終わらず、安全装置を正しく動く状態に戻す作業が増えました。これは部品代とは別の、あなたの店の手間そのものの増加です。だから工賃にも上がる理由があります。
見積もりの、どの行に乗せるか
ここが転嫁の入り口です。やることは一つ、部品代と工賃を見積書の別々の行に分けて出すことです。値上がりしたのが部品なのか工賃なのかを、客が一目で読み分けられる形にします。
- 部品代の行には、卸値が上がった分をそのまま反映します。これは外の要因で動いた金額です。仕入れ先の通知が、そのまま裏づけになります。
- 工賃の行には、1台あたりの作業の手間が増えた分を乗せます。エイミングのように工程そのものが増えた作業は、別の項目として立てると根拠がはっきりします。
- 2つを混ぜて「総額が上がりました」とだけ出すのは避けます。理由が見えないと、客は値上げを店の都合だと受け取ります。
分けて見せるだけで、説明の手間が減ります。客が自分で「部品が上がったのか」と読み取れるからです。あなたが口で足すのは、その裏にある事実の一言だけで済みます。
客に、どう切り出すか
金額の根拠は伝票で見せました。残るのは、口で添える一言です。長い説明はいりません。事実を短く言うほど、かえって伝わります。
- 「タイヤや部品の卸値が、原材料と物流の値上がりで上がっています」と、外の要因を先に言います。あなたの店が利幅を増やしたいのではない、と伝わる順序です。
- 「同じ修理でも、安全装置の調整が増えて手間がかかるようになりました」と、工賃が上がる理由を作業の言葉で添えます。
- 「今のタイヤがどこまで使えるか、次の交換の目安も一緒に見ておきますね」と、次の来店につながる一言で締めます。値上げの話を、点検の入り口に変えられます。
値上げを切り出すのは気が重い作業です。それでも、外で起きた事実と伝票の根拠がそろっていれば、客はあなたの店を疑いにくくなります。隠して総額だけ上げるより、分けて見せて短く添えるほうが、結局は続く関係になります。
数字を出す前に、確かめること
この記事の数字は、各社の発表と公的な統計から取りました。一方で、客に金額を言う前にあなた自身が確かめるべきことがあります。推測で見積もりを出さないよう、確定分と分けて並べます。
- 自店が扱う銘柄の、実際の卸値。 タイヤの平均6〜8%はメーカー出荷価格の平均です。あなたの仕入れ値の上がり幅は銘柄ごとに違うため、仕入れ先への確認が要ります。
- タイヤ以外の各社の値上げ時期。 この記事ではブリヂストンの発表を例にしました。他のメーカーや部品も改定の時期と率はそれぞれです。扱う品目ごとに最新の通知を見てください。
- 工賃の改定が、地域や客層に合うか。 整備単価が上がる理由は全国の数字で示せますが、いくらに直すかは自店の商圏で判断します。近隣の相場と照らして決めてください。
外の数字は判断の土台になりますが、最後の金額は自店の伝票と商圏で確かめてから出すのが安全です。そこまで詰めてから、客に金額を提示します。
よくある質問
出典
- 株式会社ブリヂストン「国内市販用タイヤの値上げについて」(2025年3月21日発表。国内市販用タイヤ・チューブ・フラップを平均6〜8%値上げ、夏タイヤ6月1日・冬タイヤ9月1日改定) bridgestone.co.jp/corporate/news/2025032101.html (2026年6月4日確認)
- 日本銀行「企業物価指数」公表データ一覧(国内企業物価指数 総平均の前年比。2020年平均=100) boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/ (2026年6月4日確認)
- 日本自動車整備振興会連合会(日整連/JASPA)「自動車整備白書」(総整備売上高・作業内容別売上高。2024年度版=2023年度実績) jaspa.or.jp/association/publication/book_tzuhaku.html (2026年6月4日確認)
- 一般社団法人 日本自動車会議所「日整連の2024年度実態調査、総整備売上高が18年ぶりに6兆円超える」(白書の数値の解説記事) aba-j.or.jp/info/industry/23637/ (2026年6月4日確認)
タイヤの改定率はメーカー出荷価格の平均で、店頭価格や仕入れ値とは異なります。企業物価指数は速報値です。整備売上高の数値は実態調査にもとづく推計です。金額を客に案内する前に、自店の卸値と最新の発表を再確認してください。