どの統計を、どの判断に使うか
あなたが店でする判断は、大きく3つに分けられます。仕入れと展示、車検と整備、採用と工賃です。統計は、この判断ごとに見る数字を決めると迷いません。まず全体の対応づけを一枚にします。
| あなたの判断 | 見る数字 | 主な発表元 | 周期 |
|---|---|---|---|
| 仕入れ・展示 | 新車・中古車の登録台数 | 自販連・全軽自協 | 毎月 |
| 車検・整備の見込み | 保有台数/平均車齢・平均使用年数 | 自動車検査登録情報協会 | 毎月(保有)・年1回(車齢) |
| 採用・工賃 | 総整備売上高/整備要員数 | 日整連 | 年1回 |
| 客層・需要の先行き | 世帯当たり普及台数/免許保有 | 自検協・警察庁 | 年1回 |
各団体の公表ページをもとに作成(2025年10月22日確認)。判断と数字を一対一でつなぐための対応表で、すべてを毎月追う前提ではありません。
この表の使い方は単純です。いま迷っている判断の行を1つだけ選び、その「見る数字」を今月から追います。仕入れに迷っているなら登録台数、人が足りないなら整備要員数、という具合です。残りの行は、年1回の更新時にまとめて見れば足ります。
統計と白書は、何がどう違うか
白書と統計を同じものとして探すと、欲しい数字になかなかたどり着けません。役割が分かれているので、先に切り分けておきます。
- 統計は、数字そのものです。毎月や年1回に、台数・売上・要員数といった生の数字が出ます。速く動きを追うのに向きます。
- 白書は、その数字に分析と解説を足した読み物です。背景や課題までまとめて読めますが、出るのは年1回で、対象の年度も少し前になります。
整備業を例にすると、日整連の「自動車特定整備業実態調査」が数字、「自動車整備白書」が解説にあたります。今月の入庫の判断には実態調査の数字を、採用方針や設備投資のように腰を据えて考える話には白書を、と使い分けます。速さなら統計、背景なら白書です。
仕入れと展示は、どの数字で決めるか
仕入れと展示の台数は、地域の需要が増えているか減っているかで決めます。ここで見るのは、毎月出る新車・中古車の登録台数です。年に1回の保有台数より、毎月の登録台数のほうが、いまの売れ行きの変化を早くつかめます。
新車の登録台数は普通車・小型車が自販連、軽自動車が全軽自協から、毎月の翌月はじめに速報で出ます。中古車の登録台数は翌月の中ごろが目安です。見方の基本は、前年の同じ月と比べることです。季節で台数が動くため、前月比よりも前年同月比のほうが地域の需要の流れを読みやすくなります。
- 前年同月より登録が伸びている月が続くなら、展示台数を増やす材料になります。
- 新車が前年割れでも、中古車が崩れていないなら、仕入れを中古寄りに振る判断につながります。
- 全国の数字はあくまで背景です。自店の商圏の動きと突き合わせて、最後は地元の手応えで決めます。
車検と整備の母数は、どこで読むか
車検と整備の入庫がこれからどれだけ見込めるかは、保有台数と平均車齢で読みます。保有台数は、街にどれだけの車があるか、つまり車検と整備の母数そのものです。自動車検査登録情報協会が毎月末の保有台数を、年1回は平均車齢・平均使用年数を出します。
自家用乗用車の保有台数は令和7年3月末で約6183万台あります。さらに、乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は令和7年3月末で13.35年と、長い水準が続いています。車が長く使われるほど、車検と整備の対象になる古い車が街に多く残るということです。
| 指標 | 数値(令和7年3月末) | 自店での読み方 |
|---|---|---|
| 自家用乗用車 保有台数 | 約6183万台 | 商圏の車検・整備の母数。地域人口と合わせて商圏規模を測る |
| 乗用車の 平均使用年数 | 13.35年 | 長いほど古い車が残る。新車が売れにくくても入庫は残りやすい |
自動車検査登録情報協会の公表値(令和7年版 わが国の自動車保有動向/2025年10月20日発表)をもとに作成(2025年10月22日確認)。平均使用年数は軽自動車を除く乗用車の値。
この読み方が効くのは、新車が売れにくい時期です。新車の登録が前年割れでも、車が長く乗られているなら、車検と整備の仕事はなくなりにくいと判断できます。新車の数字だけを見て先細りを心配する前に、保有と車齢で母数を確かめます。
採用と工賃は、どの統計を根拠にするか
採用を増やすか、工賃を上げるか。こうした判断は、肌感覚だけでは社内も取引先も動きにくいものです。根拠になるのが、日整連が年1回出す「自動車特定整備業実態調査」です。整備業全体の売上と人の数が分かります。
2024年度の調査(2023年度の実績)では、総整備売上高は6兆2561億円で、前年より5.9%増えました。6兆円を超えたのは18年ぶりです。売上は作業の種類ごとに内訳が出ます。車検整備が2兆5400億円、定期点検整備が4568億円、事故整備が1兆1198億円です。自店の売上を同じ区分に分けて比べると、どの作業が業界の伸びに乗れていないかが見えます。
人の数も同じ調査で分かります。整備関係従業員数は56万2869人で7年連続の増加です。現場で実際に整備にあたる整備要員数は40万2025人で、そのうち整備士は33万3047人。整備要員数に対する整備士の割合(整備士保有率)は82.8%で、前年から0.1ポイント下がりました。人が増えても有資格者の割合は伸び悩んでいる、という読み方です。採用の計画や育成の話を社内で通すときの根拠になります。
- 自店の売上を「車検・点検・事故」の3区分に分け、業界の内訳と伸び率を並べます。
- 業界が伸びている作業で自店が横ばいなら、そこに採れていない需要があると見ます。
- 工賃改定を取引先や顧客に説明するとき、業界全体の売上の伸びを後ろ盾にします。
統計を読むときの、よくある落とし穴
数字は、読み方を間違えると逆の判断を生みます。あなたが統計を使うとき、最後にこの3つだけ確かめてください。
- 基準の時点を必ず見る。保有台数は「○年3月末」、整備売上高は「○年度の実績」というように、いつの数字かで意味が変わります。最新の発表でも、中身は1〜2年前の実績ということがあります。
- 全国の数字と自店を直接比べない。全国が伸びていても、自店の商圏は人口が減っていることがあります。全国は背景、判断の主役は自店の商圏の数字です。
- 1つの数字で決めない。新車の前年割れだけを見て悲観せず、保有・車齢・整備売上を合わせて読みます。複数の数字が同じ向きを指したときに、はじめて動きます。
統計は、自店の判断を裏づける道具です。いま迷っている判断を1つ選び、対応する数字を今月から見るところから始めてください。追う数字を絞るほど、毎月の数字が次の一手の根拠になります。
よくある質問
出典
- 自動車検査登録情報協会「令和7年版 わが国の自動車保有動向」(2025年10月20日発表。乗用車の平均車齢・平均使用年数を含む) airia.or.jp/news/v19mrm0000002x5o.html (2025年10月22日確認)
- 自動車検査登録情報協会「自動車保有台数」(用途別・車種別の保有台数) airia.or.jp/publish/statistics/number.html (2025年10月22日確認)
- 自動車検査登録情報協会「自動車の平均使用年数(軽自動車を除く)」(乗用車13.35年) airia.or.jp/publish/file/shiyounensuu_2025.pdf (2025年10月22日確認)
- 日本自動車整備振興会連合会(日整連)「令和6年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要」(総整備売上高6兆2561億円=令和5年度実績、整備関係従業員数56万2869人・整備要員数40万2025人。2025年1月29日公表) jaspa.or.jp/.../R06jittaityousa.pdf (2025年10月22日確認)
- 日本自動車整備振興会連合会(日整連)統計・白書(自動車整備白書) jaspa.or.jp/member/data/whitepaper.html (2025年10月22日確認)
- 日本自動車販売協会連合会(自販連)統計(新車・中古車の登録台数) jada.or.jp/pages/54/ (2025年10月22日確認)
- 全国軽自動車協会連合会(全軽自協)統計(軽自動車の新車販売台数) zenkeijikyo.or.jp/statistics (2025年10月22日確認)
- 国土交通省「数字でみる自動車2025」(自動車関係の主要統計の一覧) mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000096.html (2025年10月22日確認)
台数・売上・要員数は各機関の公表時点の値です。基準時点(○年3月末・○年度実績)は本文に併記しました。判断の前には各機関の最新ページで再確認してください。